架空鉄道 小野川電鉄
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前略、高村にて。
貧弱で草に埋もれた線路を上下左右に揺れながら1000形は快調に飛ばす。
小野川を渡る鉄橋を越えるとグッと速度を落とし高村駅の構内に進入していく。
25キロ制限のポイントを渡り列車は3番線の停車位置ピッタリに停車した。
「う~ん、巧い!お前ウデ上げたな。」ホームに立っていた初老の駅員が運転士に言う。
「ありがとうございます。」若い運転士が笑う。
「で、何かありましたか?」
普段、駅員はホームに立たないので、何か異常があった事を意味する。
「あぁ、対向が遅れてるんだ。しばらく待ってくれ、旅客案内も忘れるなよ。」
「えぇ、もちろんです。」
そう言うと若い運転士はマイクを手に取り、遅れている旨を乗客に案内する。
「あぁ、すみません。」乗客の男性が話しかけてきた。
「どうかされましたか?」
「あぁ…いや、ちょっとトイレ行きたいんだけど…。」
「えぇどうぞ、対向列車も遅れてますし。待ってますから。」
乗客の男性はすまんねぇ。と言い跨線橋を急ぎ足で上がっていった。
「あのおっちゃん。大丈夫か?」
「…。分かりません。けど高橋さんが教えてくれたじゃないですか。」
「『つねに乗客の立場に立て。』ってか。」高橋さんと呼ばれた駅員が先に言った。
「えぇ」
二人は、顔を見合わせて笑った。

しばらくし、対向列車が1番線に入線してくる。トイレに行った男性は戻らない。
「…。戻らないな、俺が見に行こうか?」
「いえ、僕が行きますよ。」運転士が運転室を出ようとした時。
「おぉ、すまんすまん。発車時間はまだかい?」
内心まったく呑気なもんだと思いながらも。
「大丈夫です、ただもうすぐ発車するので車内でお待ち下さい。」
「おぉ、そうかいそうかい。すまないね。」
男性の乗車を確認すると運転士はマイクを持った。
「お待たせしました。次は発田に停まります。扉を閉めますのでご注意下さい。」
窓から大きく身を乗り出しドアを閉める。
「側灯ヨーシ!」
「はい、側灯よし!」高橋が復唱する。
「パイロットランプ点灯、圧力ヨーシ!出発進行!」
エアの抜ける音が聞こえる、続いて1000形の優しい警笛が構内に響く。
「じゃ、お疲れ様です!」
「おぉ!頑張れよ!」
モーターの和音が通りすぎると駅には対向列車のコンプレッサー音だけが残った。
「…。あいつめ、いつの間に一人前になりやがって。」
高橋はしみじみと空を見上げた。秋の夕暮れ空にいわし雲が浮かんでいた。
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