架空鉄道 小野川電鉄
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穏やかなひと時
具体的に言うと午前10時ごろだろうか。子供達は学校へ、邪魔な旦那は会社に出掛けていって一段落した町には、なんとも心地の良い穏やかな時間が流れている。
小学校が土曜の午前まであったのは確かに嫌だったけれど、学校に行ってる間は知ることの出来ない穏やかな町を、ふらふらと歩いて帰るのが大好きだった。

今日は高村検車区で入換当番として7513のマスコンを握っている、午前の入換作業が終わり、検査の終わった5051を引き出すまでしばらく暇になった。しかし5051の作業がいつ終わるのか分からないのでホームの長椅子で缶コーヒーを飲みながら待つことにした。

「おい、よっさん。こんなトコでサボってていいのかい?」
「よう、駅長。お前こそ駅を預かる身なのにフラフラしてていいのか?」
高村の駅長は俺と同期だ。あいつは客と、俺は電車と長年向き合ってきた。お互いに良きライバルでもあったし、良き仲間でもあった。いや、もちろん今もだけど。
「ちょっとタバコ分けてくれや、よっさん。」
あいにくだが去年にやめた。と言うと、あいつめこう言いやがった。
「あーあ、ついによっさんも晩年が訪れたのかねぇ…。」
「なんだ、それ。」
「禁酒に禁煙、朝運動。低カロリーに早寝早起き。よっさんや、生きるために力を使ってどうする?」
「うるせぃ、俺だってな、自分が可愛いんだよ。タバコくらい奢ってやるよ、駅長はラークだったな?」
「あぁ、ただしタール1ミリのな。」

なんだよ、お前もかよ。

タスポとやらは持ち合わせてないので昔っからずっとババァの駅前のタバコ屋から買う事にした。

「おい、お待たせ。お前だってちょっとは長生きしたいみたいだな。」
「まぁな、でも俺は男だ。軽くしてでも吸い続けるぞ。」
どういうこだわりか俺には全く理解できない。

「そういや、デキのデッキで吸ったタバコは旨かったな。」
「なんだ、駄洒落か?まぁ、そうだったな。30年ぐらい前の話か…。」

二人で何をする訳でもなく、ボンヤリと蒼い空を眺めていた。

構内踏切を誰かが渡ってきた。検修の渋川だから5051が上がったんだな。
「先輩、5051が上がりましたんでお願いします。」
「はいはい、了解。じゃぁな、駅長さんよ。」
「おう、また来いや。」

「さて、そろそろ時間か。タバコ吸ってる場合じゃねぇわな。」
駅長もタバコをゴシゴシと灰皿にこすり付けると早足で駅舎に戻っていく。
入換の準備が始まると、駅手前の警報機が鳴り出した。あと3~4分もすれば2つの列車がこの駅で交換する。
今までの穏やかさがかき消され、ほんの少しの間、駅には活気が戻ってくる。そして10分もすれば、さっきみたいな穏やかな駅が戻ってくるだろう。

7513の機関車のような警笛が鳴り響いた。ツリカケの駆動音を轟かしながら、ゆったりと動き始める。

穏やかなひと時もこれでおしまい。
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